アルテミス・ウーマン
神話の役割
元型心理学の創始者であるジェイムス・ヒルマンは、
神話について次のように言っています。
「神話の研究は、出来事がそれの神話的な背景に照らして認識されることを可能にする。
しかしながら、それよりも重要なことは、神話の研究によって、
魂の生活を神話的に知覚し経験することが可能になることである。」
そのクライエントさんは、ドイツ人の女性でした。
(ご本人の承諾を得て、個人情報は伏せた上で書いています)
彼女は、幼少期からとてもボーイッシュで、自立心旺盛な子どもでした。
男性に対して強い競争心と怒りを持っていて、
女性を見下したり、単なる性的な存在として扱うような男性には、
烈火のごとく怒りをあらわしていました。
自分の人生における目標が明確で、
その目標に向けて次々に行動を起こしていきます。
物事を計画し、コントロールしないといられないところもありました。
彼女の悩みは、男性含め人と親密な関係を持てないということでした。
近くにいる人ほど、冷たく、嫌な対応をしてしまうのでした。
アルテミスとアクタイオーン
そんな彼女の魂の生活の背後には、処女神アルテミスがいました。
アルテミスは、ギリシャ神話に登場する処女神で、
狩猟を司る女神でもありますから、
狙った獲物は逃さず仕留めていきます。
森のなかの泉で水浴しているところを、
たまたま通りかかったアクタイオーンに見られたアルテミスは怒り狂い、
アクタイオーンを鹿の姿に変えてしまい、
彼が連れていた犬に襲わせて殺してしまいます。
そんなアルテミスと同様に、
アルテミス・ウーマンもまた、
自分の弱い面、素顔を見られることを恐れ、
彼女のこころの柔らかいところに踏み込んで来る者には、
怒りという形で追いやらずにはいられませんでした。
そのクライエントさんは、長い時間をかけて
彼女のなかにいる「内なる少女」に出会っていきました。
その少女こそ、アルテミスが守っていた存在です。
アルテミス・ウーマンは、
自分もまた人を必要としていることを認識することで、
変わっていきます。