瞑想がなぜ必要?
私たち現代人は、絶え間ない外的な刺激にさらされています。
目から入ってくる様々な情報、物騒なサイレンやテレビやPCからのノイズ、携帯の着信音、数えたらキリがありません。
そうした刺激にさらされる度に、私たちの神経システムが反応し、常に活性化された状態にあります。
また私たちの心の内側でも、絶え間なく思考がさまよい、感情が乱れ、落ち着くヒマはありません。
身体的な健康のレベルで言えば、刺激を受けるたびに私たちの交感神経は刺激されて、神経が逆立ちエネルギーを浪費しています。
副交感神経が優位なリラックスした状態がカラダや細胞の回復・成長モードだとしたら、交感神経優位の緊張状態では細胞は常にアクティブになり、回復・成長モードに入れない状態です。
瞑想によって神経が鎮まり、内面が平静になることで、ようやく細胞は回復の機会を与えられます。
また、精神的な側面・スピリチュアルな側面からは、常に意識が外を向いて、何かにとらわれていたり、心の表面に思考や感情のさざ波が立っている状態では、私たちの存在の本質を見る機会もありませんし、見ることも出来ません。
湖面が静かになり、まるで鏡のようにクリアになることで、その底にあるものが見えてくるのです。
そのマインドの湖面を静めて、底にあるものを見る手助けをしてくれるのが瞑想です。
そこで今回は、瞑想のメリットとそのやり方を詳しくご紹介します。
瞑想から得られるもの
瞑想とは、意識のコントロールです。
内的そして外的な意識の集中をしていくことで、感覚や感情を静めて、神経や精神の苛立ちをコントロールしていくことができます。
数万時間に及ぶ瞑想の修行を積んだチベット仏教僧の脳波を解析した研究では、修行に費やした時間に比例してガンマ波という脳波が増加することが分かりました。ガンマ波は、強く集中している際に現れる高い周波数の脳波です。
また、前回のブログでも触れたように、僧たちの前頭前野は、より密度が濃くなり、別の脳の部位とのネットワークも強くなっていました。
特に、感情の働きに関わる扁桃体と前頭前野の結びつきが強くなっており、瞑想修行を積めば積むほど、感情をコントロールする能力が高まっていることが示唆されました。
瞑想には、臨床的にもストレス軽減の効果、痛みを和らげる効果、うつ病の再発率を低下させる効果などもあることがわかってきています。
イギリスで2000年頃からうつ病の治療に応用されたマインドフルネス認知療法という瞑想を取り入れた療法が、日本でもようやく心理臨床の場で取り入れられるようになってきました。
2つの瞑想のタイプ
さて、瞑想の効果やメリットについて説明してきましたが、瞑想は体験です。
それは生まれつき目が見えない方に「色」について伝えることができないように、体験するしかないものなのです。
今回は様々な瞑想法の中から、集中瞑想(サマタ瞑想)と観察瞑想(ヴィパッサナー瞑想)の二つの簡単なやり方をご紹介しますので是非、実践してみてください。
瞑想の種類 |
方法 |
集中瞑想
Focussed Attention
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対象となる物、イメージ、考え、マントラ、チャクラ、感情などに意識を集中(フォーカス)する
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観察瞑想
Open Monitoring
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自分の呼吸や、考え、欲求、カラダの感覚などをひたすら気づいて観察(モニタリング)する
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集中瞑想(サマタ瞑想)
瞑想の基本は意識の向ける先をコントロールすることです。コントロールとは、集中でもありますので、ある程度の集中力は観察瞑想にも必要です。
そこで、まず最初に集中瞑想を少し練習してみましょう。
1. 呼吸にフォーカスする
①眠くなってしまわないように背中は真っ直ぐな状態でリラックスして目を閉じて座ります。手は太ももの上に置いておくか、おへその前あたりで手の平を上にして重ねて置いておきます。
②ゆったりとした呼吸をしながら、呼吸と共に胸やお腹が膨らんだり萎んだりする感覚、鼻から空気が出入りする時の感覚や音などに意識を向けます。
③続けていると、だんだんと意識が別のところに向いて行ってしまうので、意識が散漫になったことに気づいて、また呼吸に意識を向け直す、ということを繰り返します。
最初は、2~3分から始めて、少しずつ慣れてきたら5分、10分、15分、20分と時間を長くしていきます。
2. キャンドルにフォーカスする
今度は、外にあるモノに意識を集中していく方法です。
①目の前でキャンドルを灯したら、基本の姿勢を取り、キャンドルをひたすらじっと見つめます。
②しばらくしたら、目を閉じて、そのキャンドルを心の中でイメージしていき、心の目で見続けます。
③こちらも、続けていると意識が散漫になるので、それに気づいて、またキャンドルに意識を向け直す、ということを繰り返します。
こちらも短い時間から始めて、少しずつ時間を長くしていきましょう。
観察瞑想(ヴィパッサナー瞑想)
先ほどご紹介したマインドフルネス瞑想も、この観察瞑想の一つになります。
こちらは、集中ではなくプロセスに意識を向けていくものです。
ボーッとリラックスしているような時でも、しっかりと頭の中に生じていることを観察してみると、実は色々なことを考えていたり、おぼろげな記憶の断片的なイメージが浮かんでいたり、「足を動かしたい」「額をかきたい」と言った様々な欲求が浮かんでいたり、内臓や皮膚の様々な感覚が生じていることに気づきます。
こうしたとりとめのない、浮かんでは消えていく様々な感覚、思考、イメージといったものに、気づきを向けて、ひたすらモニタリングするのが観察瞑想です。
ポイントは、私たちは何かを感じたり、考えたりすると、それに対して「こんな風に考えるのはダメだ」と批判したり、良い・悪いの判断をしがちですが、それにも気づいて、「今、◯◯はダメだという考えが浮かんでいたな」と観察することです。
生じていることに評価を下すのではなくありのままに観察していきます。
それでは、具体的なやり方です。
①基本の姿勢になる
集中瞑想と同様に、眠くなってしまわないように背中は真っ直ぐな状態でリラックスして目を閉じて座ります。手は太ももの上に置いておくか、おへその前あたりで手の平を上にして重ねて置いておきます。
②呼吸に意識を向ける
先ほどと同様に、呼吸に意識を向けて息を吸ったり吐いたりするプロセスに気づきます。腹式呼吸で息を吸うときのお腹の膨らみと、息を吐くときに萎んでいく感覚に気づきます。
③頭に浮かぶ様々な考えをラベリングする
そうして呼吸に意識を向けていると、様々な雑念や、痛みやかゆみとなどのカラダの感覚が気になって来ることがあります。それが出てきたら「頬のかゆみ」「脚の痛み」とラベリングしていきます。出来れば、そうしたカラダの感覚に応じて頬をかいてしまったり、脚を動かしてしまうのではなく、放って置くとそれらは消えてしまうことがありますので、ただ観察してみることが出来るかも試してみましょう。
また、何か未来についてのモヤモヤが出てきたら「不安」とラベリングし、過去についての苦しい記憶が出てきたら「後悔」とラベリングするなど、内面的な雑念にもラベリングをしていきます。
④呼吸に意識を戻してあるがままに受け入れる
ラベリングをしたら、それについて良い・悪いの判断を下したり、入り込んだり無理に消し去ろうとすることなく、ありのままに受け入れてみます。このとき、呼吸とお腹の動きに意識を集中させるのがコツです。
こちらも集中瞑想と同様に、5分くらいから始めて少しずつ時間を延ばしていきましょう。
只管打坐 思惑や欲に囚われず、ただひたすらに坐る
瞑想という習慣を身につけるために、アクションを起こすにはモチベーションが必要です。
そのためには、様々な瞑想のメリットを知っておくことは、大きな動機付けになることと思います。
けれど、一旦瞑想を始めたら、そうした「何かを求めて瞑想をする」態度は、逆に瞑想の妨げになってしまいます。
瞑想を始めても、初めは何も感じないでしょう。1週間、2週間たっても何の変化も起きないかも知れません。1ヶ月、2ヶ月たっても、カラダの不調も良くならず、心の平安も感じないかも知れません。
「これをしたら◯◯が得られる」という気持ちが強くなりすぎると、直ぐにそれが得られなかったらガッカリしてしまいますし、やる気も失くしてしまうことがあります。
そんな時こそ、道元の「只管打坐(しかんたざ)」という言葉を思い出してください。
意味は、ただひたすらに坐ること。
道元は、座禅をすること、それ自体が悟りである、と言っています。
成果や結果に執着しない、というのはヴェーダやヨガ、仏教や禅など東洋的宗教の偉大な教えです。
長い目でみてやる必要があることを淡々とやること、それが前頭前野の働きを活性化して意志の力を強化してくれる一番シンプルな方法かも知れません。
2020年05月24日 13:00