家で過ごす時間が長くなると、ついダラダラと食べ過ぎてしまいますよね。
また、ストレスがたまり、食べることが気晴らしや楽しみになっている方も多いと思います。
もちろん、こんな状況の中では、そうした気晴らしや楽しみも大事ですが、
過食は腸内環境を荒らし免疫力の低下に繋がる可能性もありますし、
自己嫌悪を感じたり、気持ちも落ち込んでしまいます。
そこで今回は、食べ過ぎをなんとかしたいと思っている方のために、そのポイントを心理学の研究からご紹介します。
必要なのは「強い意志」ではない!?
「やりたい事をやる」「やりたくない事をやらない」と言うのは、「意志の力」によるものです。
食べ過ぎのコントロールでは、「適度に食べる」と言う「やりたい事をやる」、「食べ過ぎてしまう」と言う「やりたくない事をやらない」ための「意志の力」が必要です。
でも、「意志の力」と聞くと、ただひたすら我慢する事をイメージしませんか?それは辛いですよね。
今回ご紹介する「意志の力」は、そうではありません。
私が研究しているサイコシンセシスの創設者であるロベルト・アサジオリは、
当時の精神医学、心理学においては全く研究対象となっていなかった「意志」の重要性にいち早く気づき研究した精神科医です。
アサジオリは、「意志」には「ただひたすら我慢する」ような「強い意志」だけでなく、
「巧みな意志」と言うものがあるのだと主張しました。
「強い意志」が逆流の川でも負けずに必死に船を漕ぐことだとしたら、
川の流れの方向を理解し、その力を利用して船を漕ごうとするのが「巧みな意志」です。
今回ご紹介する食べ過ぎないために使う「意志の力」は、現代心理学の研究成果ですが、
これらはアサジオリが指摘した「巧みな意志」に通じるセルフコントロールの方法です。
食べ過ぎてしまうのはストレスによる不快感から逃げるため
さて、つい食べ過ぎてしまう時、何となく口さみしくてダラダラと食べてしまうとき、
本当にお腹が空いているでしょうか?
冒頭で、「ストレスがたまり、食べることが気晴らしや楽しみになっている」と書きましたが、
食べ過ぎてしまう時は、お腹が空いたから食べているのではなく、
ストレスの解消のために食べてしまっている事の方が多いのではないかと思います。
では、ストレス解消って何をしているのでしょう。
ストレスを感じると、不安や焦り、モヤモヤ、苛立ち、虚しさといった不愉快な感情を感じ、
それはカラダの不快感を生じさせます。
不愉快な感情から逃げるのは逆効果
ストレスを感じた時の、不愉快な感情、カラダの不快感は耐え難いものですよね。
けれど、実は多くの人はそれをじっくり感じたことは無いのではないかと思います。
不愉快であったり、不快であるために、つい気を紛らわそうとしたり、
忘れるためにあれこれしてみたりしてはいませんか?
その一つが、食べることではないかと思います。
私たちは、食べることでそれを和らげ、飲み込んでいるのです。
つまりストレスによる食べ過ぎとは、この不快感から逃れるためのものなのです。
ところが、心理学の研究が教えてくれるのは、
「不愉快な感情から逃げるのは逆効果」ということです。
これが続くと、ストレス→不快感→食べる→不快感が解消されるという一連の負のパターンが出来てしまい、
ストレスを感じるたびに食べたくなってしまいます。
受け入れて寄り添う
気を紛らわしたり、感じないフリをするのではなく、
「受け入れて寄り添うこと」にすごいパワーがあるのです。
では、具体的にはどうするかというと、
まず、自分が感じていること、考えていることを意識化します。
もし、「もうちょっと何か食べたいな」と感じているとしたら、
それがどんな感覚なのか、カラダの何処にあるのか意識するのです。
あるいは、イライラしていたり、不安な気持ちがあるのであれば、
今自分は、どんな風にそれを感じているのかを探ってみます。
さて、この次が重要です。深呼吸をします。
不快感や不愉快な感情を感じているところに、息を吹き込むように
深呼吸を何度か繰り返しましょう。
自分の感情やカラダの感覚に気付きながら呼吸をして、
さらに意識を広げて、自分が本当にやりたいことを意識します。
もしキープしたい体重があれば、それを思い出しても良いし、
「適度に食べて胃腸の状態を整えて健康を保つ」でも、
「過食しない事で生活習慣病を防いで元気に動ける時間を出来るだけ伸ばす」でも、自分の目標を思い出します。
衝動の波のやり過ごし方を習得する
さて、もう一つストレス→不快感→食べるという一連の負のパターンを断ち切る、
重要なポイントがあります。
それは、「衝動をやり過ごす方法」を身につけることです。
食べ過ぎてしまうのは、もちろん不快な感情から逃れたい気持ちもありますが、
甘いものや中毒性のあるスナックなどを食べる事で脳が得る、
目の前の「快」の感覚を求める衝動もありますよね。
食べ過ぎを防ぐために重要なのは、この「衝動」はいずれ消えることを理解することです。
食べたい衝動とは少し違いますが、例えばカァーッと頭に血がのぼるような
「衝動的な怒り」は、どのくらい続くと思いますか?
たったの6秒です。
このカァーッと頭に血がのぼるのはカラダ中をアドレナリンが駆け巡るからですが、
このアドレナリンがカラダから抜けるまでの時間が6秒です。
つまり、1、2、3、4、5、6とカウントダウンしながら待てば、
衝動的な怒りの波は落ち着いていきます。
同様に、「食べたい」という衝動も、少し待てば消えていくのです。
そしてもう一つ心に留めておいて欲しいのは、
「あなたは「欲求」でも「感情」でもない」、ということと、
すべての「欲求」や「感情」に対応しなくても良い、ということです。
それらは、波のようにあなたのところにやってきては消えていくということを意識してみてください。
では、具体的に衝動のやり過ごし方を見てみます。
まず、最初のところで見たように、食べたいという衝動の波に襲われた時の身体的な感覚、その不快感に意識を向けます。
そして、その不快感を受け入れ、寄り添います。
ゆっくり呼吸をしながら、「この感覚を受け入れることができるし、辛抱すれば消えていく」「波のようにピークを超えれば必ず落ちついていく」と意識します。
こうして「衝動をやり過ごす」ことを繰り返していくうちに、
ストレスを感じるから食べ過ぎてしまう、という連鎖は断ち切ることができるのです。
最後になりますが、それでも食べてしまうことはあると思います。人間ですから。
その時には、反省したり罪悪感を感じる必要はまったくありません。
反省したり、自分を罰することで意志を強くできると考えてしまう方もいるかも知れませんが、
実はこれもまったく逆効果です。
意外かもしれませんが、「意志の力」は罪悪感を感じるほど、自分を責めるほどに弱まってしまうのです。
もしそうした自責の気持ちや、罪悪感、自己嫌悪が出てきたら、
そうした気持ちにも気づいて、受け入れて寄り添ってあげてください。
食べてしまったら、自分を責める代わりに、
「そんな時もあるよね」と自分に共感し、
「次、また試してみよう」励ましてあげてみてください。
2020年05月08日 17:27