サイコシンセシスとは
世界的規模の危機に直面し、抜本的な改革が苦手な日本も、一気に様々なIT化・デジタル化が進められています。
そんな中、こうしたテクノロジーの発達と生活の変化に対して、不安や懸念を持っている方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
約100年も前に、外側の世界の発達と、内側の心の発達、つまり自分の内なる世界への知識とコントロールのギャップについてサイコシンセシスの創始者、ロベルト・アサジオリは警鐘を鳴らしました。
サイコシンセシスを日本に紹介した平松園枝さんは、著書の中でアサジオリの問題意識について、こう書かれています。
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アサジオリは、20世紀のはじめに、
「文明や科学技術が発達し、物質的には豊かになったが、それで人間は幸せになっただろうか。心は枯渇しているのではないか」
「人類が自分自身の業績の犠牲になる危険があるのではないか」と危惧していました。
そして、彼は「すべての危機に共通する本質的なことは“人間のあり方”である」と考えました。
「私たちは本来、どういう存在なのか」「私たちはどのように生きれば良いのか」
彼は、こういう人間の本質、つまり人間の「真のアイデンティティ」を探求したのです。
(『サイコシンセシスとは何か』平松園枝 より)
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私たちは、「在り方」を益々問われる時代に生きています。
そして、人生100年と言われる、この時代。
仕事にアイデンティティを求めても、仕事をリタイアした後も人生は続いていきます。
生き方も働き方も多様化している中では、働かないという選択をする方も、病気や様々な理由で働けなくなってしまわれる方もいます。
結婚している方も、していない方も、子どもがいる方も、いない方も、それらは人生の流れの中で変化していきます。
こうした「変化していくもの」に自分を「同一化」し、「自分は会社員だ」「自分は教師だ」「自分は母親だ」と、アイデンティティを求めてしまうと、それを無くした時の喪失感は大きくなります。
では、私たちは何を拠り所にして生きていけばよいのでしょうか。
仕事や結婚、肩書きや実績といった枠の外に自分を持っている人、自分を知っている人、アイデンティティを持っていることが、これから益々重要となっていくのではないかと思います。
オプラ・フィンフリーをご存知でしょうか。
彼女は、ヒラリー・クリントンの次に女性大統領になる可能性が最も近いと言われているアメリカ人女性で、世界で最も影響力のある人物の一人としてタイム誌に取り上げられ、アメリカで最も裕福なアフリカ系アメリカ人としても知られています。
その彼女のスピーチからの言葉です。
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「ここを出て行く、全ての皆さんには、すごい成功の潜在的な可能性があります。ただ、それには代償があります。
何よりもまず、あなたが誰なのかを知ることです。あなたが何者であるのかを知ること。「私は誰?」そして「私が求めているのは何?」という質問に答えられること。
私が問いかけているのは、より大きな意味での「私は誰?」「私は本当は誰なのか?」「何を求めているのだろうか?」という質問です。
私はこの世界で、ただ成功したいのではありません。単に自分の名を残し、成果を得たいのでもありません。
私にとってのこの質問への答えは、「人として、私自身の最も崇高で、真実の在り方を実現したい」ということです。
あなたは自分の人生に対する何らかのヴィジョンを持つ必要があります。
たとえその計画が分からなくても、あなたが選択する行き先の方向性は持っている必要があるのです。あなた自身の人生の運転席に座るのです。
そうでなければ人生の方があなたを「運転」してしまうでしょう。」
“All of you, leaving here, have the potential for enormous success. There’s a price that comes with that. First and foremost, knowing who you are. Knowing who you are!Being able to answer this question: “Who am I?” and “What do I want?” I am asking the bigger question of “ who am I?” Who am I really? And what do I want? I don’t want to just be successful in the world. I don’t want to just make a mark or have a legacy.The answer to that question, for me, is: I want to fulfill the highest, truest expression of myself as a human being. You must have some kind of vision for your life. Even if you don’t know the plan, you have to have a direction in which you choose to go. You want to be in the driver’s seat of your own life, because if you’re not, life will drive you!”
出典:Oprah Winfrey 5 minutes for the Next 50 years of your life
翻訳は筆者による
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次は、アップルの創業者スティーブ・ジョブスがスタンフォード大学の卒業式で行った有名なスピーチからです。
「あなたの(人生の)時間は限られています。
だから他人の人生を生きて、時間を無駄にしないでください。
ドグマに捕われないでください、それは他人の考えにしたがって生きることです。
他人の意見の雑音で、あなたの内なる声をかき消さないでください。
そして、なにより大事なことは、あなたのこころと直観にしたがう勇気をもつことです。
あなたのこころと直観は、あなたが本当にしたいことを既に知っているのです。
それ以外のことは、すべて二の次で構わないのです。」
“Your time is limited, so don't waste it living someone else's life. Don't be trapped by dogma — which is living with the results of other people's thinking. Don't let the noise of others' opinions drown out your own inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary.”
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自分自身の本当のアイデンティティを知り、中心をみつけること。
自分自身に振り回されるのではなく、その中心からくるビジョンへ自分の人生を指揮していくこと。
そして、人間としての最高のポテンシャルを発揮すること。
自分に与えられた可能性を最大限に発揮して生きる、そんな素晴らしい生き方をどうしたら出来るのかを、彼らは知っていました。
彼らのメッセージを、どのように受けとめられるでしょうか?
中には、オプラやジョブズは特別な人間だから自分とは関係ない、自分はそんな風には生きられないと感じてしまう方もいるかも知れません。
サイコシンセシスでは、そのように考えません。オプラが言うように、全ての人には素晴らしい可能性があり、私たちの誰もがオプラやジョブズのように生きられると考えます。
彼らが発しているメッセージには、サイコシンセシスで目指していることと多くの共通点があります。
それもそのはず、サイコシンセシスは、人間の心の病理だけでなく、素晴らしい生き方をした人間とその心理を研究し、普通の人間である私たちがどうしたら同じように素晴らしく生きることが出来るかを示してくれた具体的なガイドラインだからです。
現在主流になっている様々なセラピーやハウツーものは、目の前の問題への対処の仕方は教えてくれても、ではその問題を解決して、私たちはどこへ向かうのか、何のためにそれをするのかといった深い問いには答えてくれません。
サイコシンセシスには、人間全体を包括する大きな地図があり、その人間を含めた更なる大きな世界観、宇宙観があります。
それは、私たちに、生きる上での地図を与えてくれるものです。