英雄神話の構造②
イニシエーションInitiation
前回のブログでお話しした英雄神話の構造の続きです。
成人式とは、 「子ども」から「成人」になるための儀式ですが、
一般的には、こうしたある社会的カテゴリー(「子ども」)から、
別の社会的カテゴリー(「大人」)に加わることを許可するための、
一連の儀式的な行為のことをイニシエーションと呼びます。
更には、何らかの宗教的な団体に加入したり、
僧侶、シャーマンなどの何らかの職能集団に加入するときなどの儀式も、
イニシエーションと呼ばれます。
現在の成人式は単なる形式になってしまいましたが、
本当のイニシエーションには、多くの試練が待っています。
試練なくして、成長や変容はありえません。
ルークもまた、降りかかる様々な問題を解決し、
何度も絶体絶命の危機を乗りこえていきます。
ルークにとっては「普通の青年」から、
「ジェダイの騎士」に
女神との遭遇
ルークがレイア姫に出会ったように、
英雄はイニシエーションにおいて、
女神・乙女あるいは聖母に
この乙女や女神は、英雄が試練を乗りこえた後に
手にすることのできる世界を象徴するものであり、
「母なるもの」との結びつきを絶ち、
それまで自分が慣れ親しんでいた世界からの自立を促してくれる存在です。
けれど、この乙女や女神とそのまま結ばれることはありません。
その前にやらなければならないことがあります。
誘惑する異性との出会い
乙女や女神と出会った英雄は、「母殺し」をしなければなりません。
ここで言う「母」とは実際の「母」というよりも、
「母なるもの」と言えます。
「母なるもの」は、育み、癒し、包んでくれるものであると同時に、
それは無意識の眠りへと飲み込んでしまうものでもあります。
英雄が英雄となるには、母性からの精神的自立が必要であり、
目覚めが必要です。
それは、様々な形の危険で英雄に襲いかかります。
ときに、全てを忘れさせるような誘惑的な女性との出会いであったり、
魔女から動物の姿に変えられてしまうような危険であることもあります。
身体的・物質的快楽に溺れて自分を見失い、
飲み込まれてしまうというのがここでの危機となります。
ルークは、レイア姫と出会った後、デス・スターのなかの
巨大なゴミ捨て場のなかで不気味な生き物に飲み込まれそうになりましたね。
父との一体化
誘惑する異性の試練を乗りこえた英雄の次なる試練は、
「父殺し」です。
ここでも、もちろん実際に父親を殺すのではなく、
父親・父なるものと対峙し乗りこえることです。
本来、父や父なるものは畏怖や脅威の対象でもあり、
父なるものとの対峙とは、
英雄の人生で
ルークにとっては、ダース・ベイダーという恐ろしい父親との
対決と和解が待っていました。
こうして父と対峙したヒーローは、
世界に対するまったく新しい見方・叡智を手に入れます。
そして、これがこの先の冒険の困難に立ち向かうことを可能にしてくれます。
終局の報酬
こうしてジェダイの騎士となり、デス・スターを破壊することに成功し、
レイア姫を救ったルークは、
最後にレイア姫から勲章をさずかりました。
多くの英雄物語りでは冒険の末に、
そもそもの冒険の目的であった永遠の命を手にしたり、
永遠の命を与えてくれるようなエリクシールと呼ばれる
霊薬を手に入れることになります。
多くのアドベンチャー映画は、
敵を無事倒して報酬を手にしたところでエンディングとなりますが、
英雄神話では、この続きがあります。
それが、リターン(帰還)です。