カウンセリングって何するところ?②
前回、こころの変容のための「容器」としてのカウンセリングのお話しをしました。
そして、「色々な感情や考えが湧いてきても、それを取りあえず脇において日常生活を送ることが出来るのはその人の強さ」と書きました。
カウンセリングで体験されることの一つに、この「内なるスペースを作ること」があります。
この内なるスペースがないと、日常生活で起こる出来事一つ一つに必要以上に反応してしまったり、自分のなかに湧いてくる一つ一つの感情に圧倒されてしまう感じがしたり、目の前のことを楽しんだり集中できないというような状態になりがちです。
認知心理学に、ワーキングメモリ(作業記憶)という言葉がありますが、
これは、脳の前頭葉の働きを指す言葉で、記憶から引き出したその時々に必要な情報を一時的に置いておき、それらを同時に処理する能力のことを言います。
その名のとおり、作業をするための領域のことなので、作業をするのに必要な道具やモノを置いておく作業机にたとえられます。
ワーキングメモリは鍛えられるかどうか、というような議論もありますが、この作業机に同時に載せておくことが出来る情報の量は、だいたい7つ前後と決まっていると言われています。ですので、ワーキングメモリがきちんと働いているということは、この作業机がいつも整理され、不要なものはどんどん手放していけているということを意味します。
こころの内なるスペースについても、同様のことが言えます。
前回、「未完了の仕事」について触れましたが、苦しくて無視してしまったり、辛くて目を向けられなかったり、自分でもそれを理解することができないためにモヤモヤしたままになってしまった色々な想いは、「未完了の仕事」としてこころのどこかに置きっぱなしになって、私たちのこころのスペースを占領していることがあります。
そうした「未完了の仕事」をしっかりプロセスして手放していくことで、こころにスペースが生まれます。
過去から持ち越してきた沢山のこころの荷物を整理して、こころの中の風通しをよくすると、精神的な余裕や遊びが生まれます。
また、このこころの内なるスペースがあると、日常生活での大変な出来事が、自己成長の機会にもなり得ます。
生きている限り、ストレスはなくなりませんし、新しい問題が次から次へと身に降り掛かってきますよね。ワーキングメモリと同様に、次から次へと入ってくるものを処理して、手放していかなければなりません。
こころに内なるスペースがあることで、周囲の人や出来事に振り回され、自分の気持ちに振り回されるのではなく、自分はいまどう感じているのか、それは自分にとって何を意味するのか、自分はどうしたいのか、といったことを“reflect”(熟考)することができます。このリフレクションこそが、こころの成長には欠かせないものではないかと思います。
自分の人生を生きるために必要なスキルでありながら、なかなか機会のないこころの整理とその仕方を学べるのがカウンセリングでもあります。
ただ、これらはあくまでもカウンセリングで多くの方が体験されることの一つに過ぎませんし、必ずしも同じ体験になるとは限りません。
また、カウンセリングだけがこうした体験の場ではないとも思いますが、ご自分のこころに関心を持つ方には、ご自分に合ったカウンセリングでこころのスペース作りを体験してもらえたらと思っています。