脳から活性化するウィルパワー
ここ最近のブログでは、「生きる目的を持つ」「信念と、厳しい現実を直視する規律(自制心)」そして、「食べ過ぎのセルフコントロール」といった、「意志」の重要性を書いてきました。
この「意志の力」 が自分ではなかなか発揮できないと感じている方や、生まれつき弱いから仕方がない、と思ってしまったり、性格のせいに感じてしまっている方も多いのではないかと思います。
けれど意志の力は誰にでも備わっているものです。同時に、育てて活性化して行けるものでもあります。
今回は、より自分らしく生きるために、より気分良く生きるために大事な「意志の力」を活性化させるための秘訣をご紹介したいと思います。
意志力はカラダで鍛えられる!?
では、この「意志の力」は、いったいどこから来るのでしょうか?
多くの方が、「意志の力」はとても純粋な精神力のように感じているのではないかと思いますが、
意志の力がきちんと発揮できるかどうかは脳・そしてカラダのコンディションと大きな関係があるのです。
つまり、意志の基礎力は、身体の状態、脳の状態にあると言えます。
もちろん、こころと脳は、まったくのイコールではありませんが、最近の心理学の研究や脳科学によって分かってきた「意志の力」を発揮するために必要な生理的なカラダのコンディションを知っておくことは有益だと思います。
脳の中の意志力の場所は前頭前野
「意志の力」を考える時に、一番重要な脳の部位は、前頭葉にある「前頭前野」です。
大脳にある前頭葉のうち、一番前の方、ちょうど私たちの額の後ろ辺りにあるのが、前頭前野(Prefrontal Cortex)と呼ばれる場所です。
この前頭前野こそ、人間を人間たらしめる脳の最高中枢部であると考えられています。
少し横道にそれてしまいますが、まずはこの前頭前野について深掘りしてみたいと思います。
前頭前野に関係している機能は、「意志力」を総合的に捉えるときに必要な力のオンパレードです。
ワーキングメモリー(同時に2つ以上のことをする際に使われるもので、作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力)、欲求/衝動/行動の抑制、計画を立てる、様々な情報を処理して推論する、目標・動機付け、意思決定、葛藤の解決、
注意の集中、など。
つまり、前頭前野は総合的には、「ルーティンな行動では対応できないような状況で、様々な情報を処理、推論して把握し、それに対して適切な判断と意思決定を行い、行動を状況に合わせてコントロールしながら実行する」というような役割を果たしています。
これらは、アサジオリが「意志の働き」について研究した際の全体像にとても近いものです。
この前頭前野の働きが、意志力を発揮していくうえでいかに重要かが分かります。
前頭前野にダメージを与える睡眠不足とストレス
さて、そんな大事な脳の部位なのに、私たちが日常的についやってしまっている、前頭前野の働きを鈍らせることがあります。
それは睡眠不足です。
なかなか睡眠時間が確保できない方にとっては少しショックかも知れませんが、なんと睡眠時間が6時間を切ると、前頭前野は効率的に活動できない状態になります。
代わりに、欲求や衝動、本能が活発に働いてしまうのです。
もう一つ、前頭前野に大きなダメージを与えるのがストレスです。もう少し具体的に言うと、ストレスを感じた時に放出されるストレスホルモンです。
最近、一つの仮説として注目されているのは、うつ病と前頭前野の関係です。
ストレスを受けると副腎からストレスホルモンが放出されます。
本来、脳には異物を入れないようにするバリア機構である脳血液関門と言うストッパーがあるのですが、ストレスホルモンは血流に乗って脳関門を突破してしまうらしいのです。
うつ病の方は、慢性的に放出されるストレスホルモンによって、前頭前野がダメージを受けた状態になっているのではないかと考えられています。
それ故、うつ病の治療には前頭前野の回復が必要なのではないかと言う方もいます。
また別の研究では、前頭前野の体積が大きな人は、大変な出来事をポジティブに受け止めるような楽観的な考えをしやすく、
感情的な反応やストレスから身を守りやすい性格であることも分かりました。
ただ、嬉しいことに、前頭前野のダメージは私たちにも回復させていくことが出来ますし、体積を変えていくことも出来ます。
前頭前野を活性化させ体積を増やす3つのポイント
ではここからは前頭前野をどうしたら活性化できるか考えてみます。
これらの方法は、うつ病によって前頭前野にダメージを受けやすいと言う仮説を考えるならば、
コロナによる不安、疲労、ストレスで「コロナ鬱」っぽく感じている方にも役立つのではないかと思います。
①生理的に前頭前野を活性化する方法、1つ目は睡眠です。
とてもシンプルですが、睡眠のサイクルを整えて適切な睡眠時間を確保しましょう。
上述したように、睡眠時間を6時間以上に増やしていくことで前頭前野は効率よく働いてくれるようになるのです。
研究では、依存症を克服したいと思っている方の克服失敗の確率は、睡眠時間を伸ばすことによって格段に下がることが分かっています。つまり、1時間多く寝るだけでも、意志の力を発揮して欲求をコントロールすることに成功しやすくなったのです。
体内リズムを整えて、夜にちゃんと眠気がやってくるように睡眠のリズムを整えるポイントは、以前のブログでご紹介しましたので、よかったらご参考にしてください。→コチラ
②生理的に前頭前野を活性化する方法、2つ目は瞑想です。
瞑想(メディテーション)の詳しいやり方などは、次回またご紹介したいと思いますが、
瞑想によって前頭前野への酸素と血流が増加することがわかっています。
これも睡眠と同じく、効果はすぐに表れます。たとえば1日10分の瞑想をはじめた人の前頭前野の状態は、数カ月後にはまったく変わって、体積も大きくなり他の部分との結びつきも強くなりました。
また、1日にほんの少し瞑想をするだけで、睡眠時間が増えることも分かっていますので、睡眠時間を増やすためにも瞑想は効果があります。
③生理的に前頭前野を活性化する方法、3つ目は運動(エクササイズ)です。
もともと体を動かす習慣がなかった人が、定期的にエクササイズをするようになると、数ヶ月後には前頭前野の密度は濃くなり、体積が増え、他の脳の部分とのつながりも強くなることも研究で分かりました。
ヨガ、ウォーキング、ランニング、筋トレ、スポーツ、山登り、水泳なんでも構いませんので、続けられるものを無理なくやってみてください。
以上、前頭前野を活性化して密度を濃く、体積を増やす方法をご紹介しましたが、全てやらなくても大丈夫です。
取り組みやすいところから、ご自分のペースで始めてみてください。