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「失意」という精神的ダメージから身を守る②

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前回のブログでは、フランクルから絶望的な状況を生き延びる力を学びましたが、

 

フランクルと同様、安全も未来も保障されていない過酷な状況から生還し、

 

失意の危険性を説いた、もう一人のサバイバーをご紹介します。


それは、アメリカ軍将校のジェームス・ストックデールです。
 

フランクルが収容所から解放されて20年後、

 

1965年ベトナム戦争で戦っていたストックデールは捕虜となり捕虜収容所に入れられました。

 

ストックデールは、足に鉄の鎖をつけられ、日常的な暴行を受け

20回以上にわたると言われる拷問が行われた

いつ釈放されるかも分からない7年半もの捕虜生活を生き延びた人です。

 

拷問を耐え抜いたストックデールの逆説

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そのストックデールに、ジェームズ(またはジム)・コリンズが取材をし、

 

その捕虜生活を生き延びることができた原動力について問いました。

 

ストックデールは、こう言います。
 

”I never lost faith in the end of the story, I never doubted not only that I would get out, but also that I would prevail in the end and turn the experience into the defining event of my life, which, in retrospect, I would not trade.”

 

「わたしは結末について確信を失うことはなかったここから出られるだけでなく、最後にはかならず勝利を収めてこの経験を人生の決定的な出来事にし、あれほど貴重な体験はなかったと言えるようにするということを、決して疑うことは無かった」

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つまり、「最後には必ず外に出て勝利をおさめる」という強い信念が彼を支えたのだと言います。
 

盲目的な楽観主義は危険


一方で、生き延びることが出来なかったのはどんな人かというコリンズの質問に対して、

ストックデールはこう答えます。
 

”Oh, that’s easy, the optimists. Oh, they were the ones who said, 'We're going to be out by Christmas.' And Christmas would come, and Christmas would go. Then they'd say, 'We're going to be out by Easter.' And Easter would come, and Easter would go. And then Thanksgiving, and then it would be Christmas again. And they died of a broken heart.”
 

「それは簡単だ、楽観主義者だ。そう、クリスマスまでには出られるさ、と言っていた人たちだ。クリスマスが近づき、終わる。そうすると、彼らは復活祭までには出られると考える。そして復活祭が近づき、終わる。つぎは感謝祭、そしてつぎはまたクリスマス。そうして彼らは失意のために死んでいった


以前にペパー先生のブログから紹介したように、免疫力を上げるのには楽天的でいることは確かに重要です。

けれど、危機的状況では、あと1ヶ月くらいでどうにかなる、といった非現実的で盲目的な楽観主義は失意という大きな精神的ダメージに繋がってしまいます。


ストックデールは言います。
 

This is a very important lesson. You must never confuse faith that you will prevail in the end—which you can never afford to lose—with the discipline to confront the most brutal facts of your current reality, whatever they might be.


「これはきわめて重要な教訓だ。最後にはかならず勝つという確信、これを失ってはいけない。だがこの確信と、それがどんなものであれ、自分がおかれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視する規律とを混同してはいけない」


これが「ストックデールの逆説」です。


つまり、最も厳しい事実や現実を直視しながらも、「最後には絶対に大丈夫」という確信を失わないこと。


普通は、厳しい現実を直視すると悲観的になり、心が折れてしまいがちですよね。

だからこそ、逆説なのです。

目の前にあるもっとも厳しい事実を直視するとは、今の私たちにとっては、

コロナの感染力や、感染した場合に起こりうる最悪の事態、今体験している様々な制限や不自由がまだまだ続く可能性あることなどを、きちんと直視することではないかと思います。


では、その中で「最後には絶対に勝つ」という信念を持ち続けるには、どうしたら良いのでしょう。


ストックデールは、”Faith”(確信あるいは信念)"DIscipline"(規律、統制、自制心)の両方の重要性を説きました。

これこそが危機を乗り切る最大の秘訣かも知れません。


自分がやる必要があることに意識を集中して、それをやり続けるという規律。

そこから生まれる「大丈夫」という自信と、「絶対に乗り切れる」という確信。

その両輪があって、前に進んでいけるのではないかと思います。

 

自分にできること・やる必要があることをやり続ける規律


自分に出来ることは、人それぞれだと思います。

働くために外に出なければならない人は、ソーシャルディスタンスを気を抜かずに行うこと、手洗いやこまめな水分補給、そして免疫力をあげることに集中すること。

また在宅勤務の方や、自粛で家にこもれる方は、生活リズムが乱れて体調を崩さないように気をつけること。

また、もう既に様々な事情で精神的・身体的な不調や苦しさを抱えている方にとっては、布団から出ることは辛いことかも知れません。カーテンを開けることは、しんどいことかも知れません。

そんな時には、自分に優しくしてあげてください。

頭の中にある自分を責める声、出来ていないことを並べ立てる声に耳を貸さずに、あなたがもう既に出来ている事を、それがどんなに些細なことでも労ってあげてください。

私たちは、それぞれ、もう既に充分、頑張っていると思います。

ですから、もう既にやっている事、出来ている事に目を向けましょう。

それが小さな事でも、やっている自分を労いましょう。

そうして「終わりは必ず来る」という確信を持って乗り切りましょう。


 

2020年04月30日 10:00

「失意」という精神的ダメージから身を守る①

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緊急事態宣言が出され、政府はその期限を5月6日としました。

 

心のどこかでは、そんなに早く収束するはずがないと思いながらも、5月6日を心待ちにしている方もいるかも知れません。

 

また、緊急事態宣言が解除されたら、元どおりの日常が送れると期待している方も多いのではないかと思います。

 

けれど、この「◯日までの辛抱だ」「夏になったら解放され元どおりになる」

 

と言った希望の持ち方は、時に私たちに大きな精神的ダメージを与えると唱える人たちがいました。

 

それは、強制収容所での過酷な状況や、何年も続く捕虜生活と拷問を生き延びた人たちです。

 

各国のトップは口々に、コロナウイルスとの戦いは戦争であると表現しましたが、

 

もしそうなのであれば、戦争という過酷な状況を生き抜いた人々の体験から、

今の私たちは何か学べることがあるのではないかと思います。

 

強制収容所を生き抜いたフランクル

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ヴィクトール・エミール・フランクル
という人をご存知でしょうか。

 

彼は、オーストリアの精神科医であり、ユダヤ人です。

 

そして、それ故に、第二次世界大戦の際にナチスドイツによって

 

アウシュビッツ強制収容所に送られてしまいます。

 

もちろん、フランクル一人でなく、彼の両親も、兄も、結婚したばかりの妻も、ユダヤ人として強制収容所に送られ、殺されてしまいます。

 

フランクル自身も、収容所の中で過酷な労働、寒さ、飢え、暴力に苦しみといういつ終わるか分からない収容所の生活を送りながらも、その状況を耐え抜いて生還しました。

 

そして、その時の体験を克明に記録した、ベストセラーとなる「夜と霧」を執筆したのです。

 

家も、家族も、食べるものも、お金も、自由も、すべて奪われてしまった時

 

人は、こんな人生に何の意味があるのだ絶望します。

 

いったい、この人生に、生きる意味などあるのか、と。

 

強制収容所は、こうした全てを奪われた人々の集まりでした。

 

そんな中で、フランクルは囚人たちが何に絶望し、

 

どんなことに希望を見出したのかを精神科医の視点からつぶさに観察しました。

 

そして彼が発見したのは、絶望の中での生き延びる力です。
 

人生に期待するのをやめ、生きる目的を持つ

「クリスマスには収容所から解放される」という噂が広まったのち、

 

その通りのことが起きなかったとき、人々は失望し、自暴自棄になり、力尽きてしまいました。

 

また、夢の中で「5月30日に戦争が終結する」という予言のような声を聞き、それを信じたその人は、

 

何の状況変化も起こらなかった5月29日に高熱を出し、31日には亡くなってしました。

 

フランクルは、「人生に期待するのをやめよ」と言います。

 

人生に何かを期待し、そこに生きる力を託してしまう時、

 

それが現実のものとならなかった時、人は失意のうちに生きる力も無くしてしまいます。

 

そんな状況を生き延びる唯一の道は、「生きる目的」を持つことだとフランクルは悟ります。

 

「生きる目的」を持つためのコペルニクス的転換とは

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そして、そのためには「コペルニクス的転換」が必要だと言います。

 

つまり「人生の意味を問う」ことから、「人生から投げかけられている問いに応える」ことへの転換です。

 

 

「もういいかげん、生きることの意味を問うことをやめ、


わたしたち自身が問いの前に立っていることを思い知るべきなのだ。


生きることは日々、そして時々刻々、問いかけてくる。


わたしたちはその問いに答えを迫られている。


考え込んだり言辞を弄することによってではなく、


ひとえに行動によって、適切な態度によって、正しい答えは出される。」

 

さらに、フランクルは言います。

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「どんな時にも人生には意味がある。

 

未来で待っている人や何かがあり、そのために今すべきことが必ずある」

 

そうして、未来に向けた「生きる目的」だけでなく、

 

極限状態においても人間性を保つことの重要性についても指摘します。

 

囚人たちの中には、そんな過酷な状況にあっても、音楽を楽しみ、夕焼けを見て心を震わす者たちもいたと言います。

 

一瞬、一瞬を大切にして、美や創造の喜びを感じることが、

 

どんな状況にあっても生きがいを見いだす力になるのだと。

 

2020年04月28日 10:13

コロナ自粛による生活リズムの乱れをリセット

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長引く自粛生活と慣れない在宅勤務で、生活リズムが乱れてしまっている方も多いのではないかと思います。

 

また、緊張と不安が続く毎日で、夜に寝つきが悪くなったり、朝なかなか起きられず、中には、昼夜逆転してしまっている方もいらっしゃるかも知れません。

 

こうした、生活リズムの乱れ、不安や緊張の高まり、睡眠サイクルの乱れは、自律神経の乱れに繋がることがあります。

 

もし、なんとなく身体が重い、だるい、頭が重くてスッキリしない、気持ちが落ち込むといった体験をされいる方がいたら、それは、こうした生活リズムの乱れによる「自律神経の乱れ」が原因となっているかも知れません。

 

「コロナ鬱」という言葉も聞こえてくるようになりましたが、自律神経の乱れが続くと、抑うつ状態になるリスクも増えます。それは、免疫低下にも繋がりかねません。

 

(もちろん、数日から数週間、生活リズムが乱れたからといって、すぐに病気になるわけではなく、その状態が1ヶ月、2ヶ月と続いてしまうことが問題なので過度に不安になる必要はありません。)

 

そこで、ここで視点を切り替えて、「どうしたらそれを防げるか」「体調を整えて毎日を元気に過ごすにはどうしたら良いか」に焦点を当てましょう。

メリハリ(活動とリラックス)が大事


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私たちが普段、意識しなくても呼吸したり、心臓が動いたり、食べたものを消化したり、汗をかいて体温調節が出来ているのは、すべて自律神経のおかげです。

 

私たちの身体にはたくさんの神経がありますが、その中でも内臓の働きを調整して、体温、血圧、心拍、呼吸、発汗、胃腸の運動などをコントロールしてくれているのが自律神経です。

 

そしてこの自律神経は、昼間の活動している時に優位になる「交感神経」と、夜にリラックスしている時に活発になる「副交感神経」の2つが、バランスよく働いてくれることで、心と体の調子が整うのです。

 

つまり、自律神経を整えて、頭がスッキリ、体も軽く、気分良く過ごすには、この「活動・適度な緊張」と「休息・リラックス」のメリハリを作ることが重要です。

 

出来るだけ昼間は身体や頭を動かして活動し、夕方以降はリラックスしてのんびり過ごす、というサイクルができると自律神経は整いやすくなります。

 

体内時計は24時間じゃない

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さて、この自律神経にはリズムがあります。先ほど、昼間は交感神経が活発になって、夜は副交感神経が優位になると言いましたが、これは1日を通した大きなリズムです。

 

このような一定の時間帯に上がったり下がったりするような約1日の周期があるリズムのことを、サーカディアンリズムと言います。

 

サーカディアンリズムの代表が、睡眠と覚醒のリズムです。

 

そして、このサーカディアンリズムは体内時計によって調整されていますが、ここに大きな問題があります。

 

地球の周期が1日24時間なのに対して、なんと体内時計の周期は1日は24時間から25時間です。

 

つまり、本来、人間の体内時計と、外の環境にはズレがあるのです。

 

そのため、放っておくと、私たちが自然と眠くなる時間は、毎日少しずつ遅れて行ってしまうことになります。

 

コロナ自粛で家にずっといると、起床時間と就寝時間が、だんだん後ろにずれていってしまうのは、そのためです。

 

朝の太陽光を浴びて体内時計をリセット

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では、サーカディアンリズムを整えて健康を保ってくれる体内時計、どうやったらリセットできるのでしょう。

 

それは、午前中にしっかりと朝の強い光を目に入れること。

 

(とはいえ、直接太陽を見ないでください)

 

そのメカニズムは、こうです。

 

目から入った光は、網膜を通して視床下部にある視交叉上核に伝わります。

 

ここが体内時計をリセットしてくれる場所です。

 

こうして伝わった光の信号は松果体(しょうかたい)に伝わり、


その1416時間後に再びメラトニンという睡眠ホルモンが分泌されることで


眠気が生じるというのが、一連の仕組みになっています。

 

食事や運動もバイオリズムを整えてくれる

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午前中の強い光だけでなく、食事や運動なども体内時計をリセットする刺激となると考えられています。

 

まずは食事。皆さまそれぞれ状況があると思いますが、やはりいつも同じ時間に朝ご飯、お昼、夕飯を食べるということがリズムを整えてくれます。

 

それを一つの区切りとして、一日のルーティンを作ってみてはいかがでしょうか。

 

軽い散歩などの運動は、午前中にすることで太陽光を浴びることにもなるので良いと思いますし、

 

断捨離や家の片付け、掃除などの体を動かす家事も午前中にやると良いと思います。

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夜は出来るだけのんびり、ゆったり、リラックスして過ごせるように、

 

お仕事をされている方は、夕食前までの時間に集中して終わらせるようにするなど、

 

時間の区切りを意識して、ご自分にあった生活リズムを作ってみてください。


こんな大変な時だからこそ、それを乗り越えていくための大事な基礎として、


まずは体内時計を毎日リセットし、自律神経のリズムを整え、体調が整うことで、


ココロとカラダの体力を保っていきましょう。

 

2020年04月24日 17:36

自宅でのテクノストレスを減らす

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Posted: March 19, 2020 | Author: erikpeper |

Adapted from the upcoming book, Peper, E., Harvey, R., & Faass, (in press). Tech Stress: How Technology Is Hijacking Our Lives, Strategies for Coping, and Pragmatic Ergonomics. Berkeley: North Atlantic Books.

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コロナウイルスの影響で、テレワーク、在宅勤務をする方が増えています。

普段とは違う、慣れない環境で仕事をこなしていくことに、大きなストレスを抱えている方も多いのではないでしょうか。

また家でのお仕事だけでなく、自宅でテレビやパソコンを眺めて過ごす時間が増えている方も多いかと思います。

そんな在宅勤務、自粛による在宅時間の長時間化でのストレスによる、心身の疲労を少しでも減らすために、

今回も米国サンフランシスコ州立大学健康教育学部教授のエリック・ペパー先生のブログを共有させて頂きます。

長丁場になりそうなコロナウイルスとの格闘、皆さまの毎日が少しでもストレスの少ないものになりますように、、、

英語でのオリジナルは、こちらをご覧ください。

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自宅でコンピューターの作業をすることは、オフィスで作業するよりも疲れるということを、多くの人々が報告しています。 在宅勤務には明らかな利点がありますが、不利な点もあります。
 

(たとえば、仕事をするスペースがない、努力を要する人間工学的状態、家族から避難できない、(オフィスでは)コミュニケーションに使われていた非言語での指示の欠如、 (オフィスでは)冷水機近くで交わされていたフレンドリーな会話などの共有の不足、子どもの世話をしつつ仕事することでのマルチタスクの増加など)
 

主な課題は、自宅に快適な作業スペースを確保することです。これは、コンピューター、キーボード、スクリーンを置く場所を見つけることを意味するかもしれません。

それがキッチンテーブル、寝室の隅にあるデスク、またはコーヒーテーブルの上になることもあれば、完全に独立した部屋になることもあるでしょう。
 

人間工学的に不適切な配置とストレスの多い作業スタイルは、首、肩の不快感を増加させ、目の疲れや疲労を悪化させます。

デジタル作業スペースがどのような場所で作られているかに関係なく、あなたの健康を促進するために、次の生活習慣とワークスタイルの提案人間工学に基づくアドバイスを取り入れてみてください。

 

生活習慣とワークスタイルの提案
 

◆ 休憩を何度も、何度も、何度もとる  

動きのある休憩を取ることは、固定された位置で座ってコンピューターで作業していると蓄積されていく、隠れた静止状態の緊張を減らすことができます。


・数分おきにちょっとした休憩をとりましょう。例えば、立ち上がって肩をグルグルと動かし、大きく回します。動くときには、スクリーンを見ることをやめて、部屋の中を見まわしたり、窓の外を見ましょう。

・30分ごとに立ち上がって歩き回り、体を動かします。タイマーを使って30分ごとに通知するようにして、休憩を取ります。(例えば、携帯電話のアラーム、Hey Google、Siri、Alexaなどのパーソナルデジタルアシスタントを使います)

 

◆ 視覚の改善

  • 目の休憩を取り、目の疲労を減らす
    ・数分ごとにスクリーンから目を離して、遠くを見てまばたきします。 可能であれば、外の緑の植物を眺めます。近くを見ていたことによる緊張を和らげてくれます。

    ・まばたきを何度もしましょう。コンピューターで作業するとき、まばたきの回数が減ります。ですから、新しいリンクをクリックするたびに、数字の列の入力を終了するとき、などなど、まばたきをしましょう。

    ・アゴをリラックスさせて、まぶたを落として目を閉じます。 あなたの頭上にフックがあって、それが頭を上に引っ張っているのをイメージしながら、同時に肩を下に落としましょう。

 

  • 背景のギラつきと明るさを減らす

    ・コンピュータのスクリーンを、部屋の最も明るい光源に対して90度に配置します。

    ・ビデオ会議に参加するとき、自分の後ろの背景を暗めにしましょう。 (例えば、 Zoom, Skype, GoToMeeting, WhatsApp, FaceTimeなど). あなたの顔が見やすくなります。

 

◆ 回復する


・ストレスがたまったら、呼吸をすることを忘れないでください。息を吸うときにはお腹をふくらませ、吐くときにはお腹からゆっくりと空気を出していきます。

・否定的なニュースを見たり聞いたりするのをやめましょう(ニュースは1日に1回だけチェックしてください)。

・ポジティブで面白い映画を観ましょう。

・新鮮な空気を吸いましょう。散歩に出かけ、太陽の下で過ごしましょう。

・友達と再びつながり、ポジティブな体験を共有しましょう。(オンラインで)

・これもまた過ぎ去っていく、ということを自分に言い聞かせましょう。

 

人間工学に基づくアドバイス世界をあなたのものに


優れた人間工学とは、機器や環境をあなたに合わせることであり、その逆ではありません。図1に示すように、椅子、机、キーボード、マウス、カメラ、スクリーン、および自分の配置を最適なものにしましょう。


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図 1. コンピューターで仕事をする際に推奨される配置


◆ ラップトップを配置する
 

ラップトップには、課題があります。キーボードでデータを入力するために手が適切な高さにある場合、画面を見るためには下を見なければなりません。スクリーンが適切な高さにある場合は、キーボードに届くために手を上げなければならないのです。この課題には2つの解決策があります。


1. 外付けのキーボードとマウスを使用してスクリーンの上部が目の高さになるようにラップトップを持ち上げます。ラップトップスタンドを使うか、または本を積み上げてラップトップを持ち上げます。

2. ディスプレイに外付けモニターを使用し、ラップトップをキーボードとして使用します。


これらの解決策が不可能な場合は、首や肩のストレスを減らすために、何度も何度も休憩を取ってください。


◆ コンピューターの作業場を配置する


1. 椅子を調整して、肩を上げずに前腕がテーブルに乗る高さに調整します。これは(椅子の上にクッションをのせて)そのクッションに座ることを意味するかもしれません。もし椅子が高すぎて足がぶら下がっている場合は、足を置くことができるフットスツールを用意しましょう。

2. スクリーン上部が目の高さになるようにモニターを調整します。モニターが低すぎる場合は、その下に何冊かの本を置いて持ち上げます。

3. 可能であれば、作業中は立ったり座ったりを交互にします。

 

 

RESOURCES

Ergonomic suggestions for working at the computer and laptop.

https://peperperspective.com/2014/09/30/cartoon-ergonomics-for-working-at-the-computer-and-laptop/

https://peperperspective.com/2014/02/24/optimizing-ergonomics-adapt-the-world-to-you-and-not-the-other-way-around/

11 tips for working at home

https://www.bakkerelkhuizen.com/knowledge-center/11-productivity-tips-for-homeworkers/?utm_campaign=US+-+19+03+20&utm_source=Newsletter&utm_medium=email

How our digital world activates evolutionary response patterns.

https://peperperspective.com/2020/01/17/evolutionary-traps-how-screens-digital-notifications-and-gaming-software-exploits-fundamental-survival-mechanisms/

https://peperperspective.com/2018/02/10/digital-addiction/

How posture affects health

https://peperperspective.com/2019/07/01/dont-slouch-improves-health-with-posture-feedback/

https://peperperspective.com/2019/05/21/relieve-and-prevent-neck-stiffness-and-pain/

https://peperperspective.com/2017/11/28/posture-and-mood-implications-and-applications-to-health-and-therapy/

https://peperperspective.com/2019/01/23/head-position-it-matters/

2020年04月17日 19:23

呼吸パターンを変えることで、コロナウイルスへの曝露を減らせるか?

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the peper perspective

Posted: April 1, 2020 | Author: erikpeper  Erik Peper

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こちらもコロナウイルスについての、米国サンフランシスコ州立大学健康教育学部教授のエリック・ペパー先生のブログです。先生に前回のブログを日本語に訳して皆さまと共有したいとお願いした際に、今回のものともう一つ(次回アップします)についても紹介することを勧めて頂きました。

英語でのオリジナルは、こちらをご覧ください。

皆さまのコロナ対策の一助となれば幸いです。

*これらは現時点(2020年4月1日)でのコロナウイルスについての情報ですので、今後変わっていく可能性はあるかと思いますので、その点はご留意ください。

*またこの日本語訳は感染症の専門家でも医師でもない私が翻訳したものですので、もし間違いがあった場合にはお知らせ頂けますと幸いです。

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このブログは、1990年代に始まった呼吸に関する研究に基づいています。この研究は、病気の原因となる機能不全の呼吸の特定に役立ちました。

呼吸のパターンを最適なものにし、健康を増進し、パフォーマンスを改善するために、バイオフィードバックを用いたコーチング/教育戦略を開発しました (Peper and Tibbetts, 1994Peper, Martinez Aranda and Moss, 2015Peper, Mason, and Huey, 2017).
 

たとえば、喘息がある人々には、タバコの煙や他の空気中の刺激物に対する反応性を低下させるように指導しました (Peper and Tibbitts, 1992Peper and Tibbetts, 2003). 

人が息を吐くと、たばこや電子タバコの煙は広がります。もしその人が感染していると、この煙は、図1に示すように他の人々が吸い込むことになるウイルスの霧を表しています。


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図1. ラトビアのリガで電子タバコを吸う若者 (写真 Erik Peper).


呼吸の仕方を変えるために、参加者はまず自然なゆっくりとした横隔膜呼吸を学びました。 次に、タバコの煙などの空気中の刺激物に気づいた瞬間に、息を止めて体をリラックスさせ、非常にゆっくりと鼻から息を吐きながら、空気の汚染源から離れていくように教えました。空気が澄んだら、横隔膜呼吸で自然な呼吸をつづけました。(Peper and Tibbetts, 1994). 

この研究から、私たちは呼吸パターンを変えることによってコロナウイルスへの曝露を減らすことができるかも知れないと提案しています。しかし、最初のステップは、推奨される公衆衛生ガイドラインに従うことによる予防です。

  • ・社会的距離をとる(社会的サポートの提供を続けつつ身体的な距離を取る
    ・少なくとも20秒間、石鹸で手を洗う
    ・手で顔を触らない
    ・ドアの呼び鈴、ドアノブ、容器など、他者が触れた可能性のあるモノの表面のクリーニング
    ・マスクと手袋を着用して、他の人へのウイルス拡散を減らす。マスクはコロナウイルスに感染した人あるいは、無症状の保菌者によるウイルスの拡散を予防します。

 

呼吸パターンを変えることで、他の人が近くにいるときのウイルスへの曝露を減らす 
 

通常、私たちがビックリしたり驚いたりすると、すぐにハッと息を呑み、空気を急いで吸い込む傾向があります。

誰かが近くでくしゃみをしたり、咳をしたり、息を吐いたりすると、私たちはわずかに息をのみ、その飛沫を吸い込んでしまうことがよくあります。

飛沫(コロナウイルスを含む可能性があります)の吸い込みを減らすには、次のことを実施します。

  • 人が近づきすぎたとき
    ・口を閉じて、肩をリラックスさせて息を止め(息を止めるだけです)、その人から遠ざかります。
    ・鼻から静かに息を吐きます(息を吐く前に吸い込まないでください)ー吐ける息がどれほど少なくても多くても、吐くだけです。
    ・十分離れたら、鼻から静かに息を吸います。
    ・息を止めるときは、リラックスして、肩が下に落ちていると感じることを忘れないでください。息を止めるのは、人から離れるとき、ほんの数秒間だけです。 息を吸い込む前に、鼻から息を吐きます。
     
  • 人が咳やくしゃみをしたとき
    ・息を止めてその人から離れるように頭を回転させ、鼻から息を吐きながらその人から離れます。
    ・くしゃみや咳の飛沫が、あなたやあなたの服に着いたと思われる場合は、家に帰り、家の外で衣服を脱ぎ、服を洗濯機に入れてください。 シャワーを浴びて、石鹸で体を洗います。
     
  • あなたの前にいる人やあなたに近づいてくる人を通り過ぎるとき
    ・彼らに近づき過ぎる前に息を吸い込み、彼らと通り過ぎるとき鼻から息を吐きます。
    ・6フィート(約1.8m)以上離れたら、鼻からゆっくりと息を吸います。
     
  • 外で人と話すとき
    ・風が同じ側から両方の人に当たるように立って、吐き出された飛沫が両方から吹き飛ばされるようにします(風下)。

 

これらの呼吸スキルは、一見とてもシンプルに見えます。しかし、喘息やその他の症状を持つ人々との私たちの臨床経験では、その人の自動的な呼吸パターンを変えるには練習、練習、また練習が必要でした。

新しいパターンは、呼吸をいったん止めて(止めて)から、鼻から息を吐き出すというものです。この呼吸パターンは強制されたものではないということと、練習によって楽に出来るようになるということを忘れないでください。

 

参考文献

Peper, E., Martinez Aranda, P., & Moss, E. (2015). Vulvodynia treated successfully with breathing biofeedback and integrated stress reduction: A case report. Biofeedback. 43(2), 103-109.

Peper, E., Mason, L., Huey, C. (2017).  Healing irritable bowel syndrome with diaphragmatic breathing. Biofeedback. (45-4)/

Peper, E., and Tibbetts, V. (1992).  Fifteen-Month follow up with asthmatics utilizing EMG/Incentive inspirometer feedback. Bio­feedback and Self-Regulation. 17 (2), 143-151. 

Peper, E. & Tibbetts, V. (1994). Effortless diaphragmatic breathing. Physical Therapy Products. 6(2), 67-71.  Also in:  Electromyography:  Applications in Physical Therapy. Montreal: Thought Technology Ltd. 

Peper, E.  and Tibbitts, V.  (2003). Protocol for the treatment of asthma.  In:  Zheng, Y. (ed).  Clinical Practice of Biofeedback. Beijing:  High Education Press (HEP). 163-176. ISBN 7-04-011420-8

2020年04月15日 06:45

初期のウイルス摂取量を減らし、免疫システムを最大化する

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Posted: April 4, 2020 | Author: erikpeper Erik Peper and Richard Harvey

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コロナウイルスについて、信頼できる情報を得て、適切な対処をしていくことの重要性を前回のブログで書きましたが、私の信頼する米国サンフランシスコ州立大学健康教育学部教授のエリック・ペパー先生がブログで、COVID-19について書かれていましたので、先生の許可を得て日本語に訳し、こちらで共有させて頂きます。

英語でのオリジナルは、こちらをご覧ください。

皆さまのコロナ対策の一助となれば幸いです。

*これらは現時点(2020年4月4日)でのコロナウイルスについての情報ですので、今後変わっていく可能性はあるかと思いますので、その点はご留意ください。

*またこの日本語訳は感染症の専門家でも医師でもない私が翻訳したものですので、もし間違いがあった場合にはお知らせ頂けますと幸いです。

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COVID-19は、若者から高齢者の免疫システムを圧倒することもあり、場合によっては「重症急性呼吸器症候群」の肺炎と死をもたらす可能性があります (CDC (2020)


がん、心臓病、糖尿病、肺気腫、その他の健康問題を同時に患っている可能性のある高齢者の方が、リスクが高くなります。

加齢とともに免疫システムが低下し(免疫老化)、ウイルス感染に反応する必要がある適応免疫システムの反応が低下します (Aw, Silva & Palmer, 2007Osttan, Monti, Gueresi, et al., 2016).

 

疾患の重症度はウイルスの初期の用量によって左右される可能性があります


コロナウイルスは患者の体内でどのように振る舞うのか?我々は、 人々の間でのウイルスの広がりを集計してきたが、これからは一人の人の中でそれを集計する必要がある”という素晴らしい論文において、 コロンビア大学の内科助教授であり、ガンの内科医師であるシッダールタ・ムカージーは、この病気の重症度が初期のウイルス摂取量と関連している可能性があると指摘しました。


つまり、少量(ウイルス粒子が多すぎない量)を摂取した場合、感染はしますが、体は感染に対処するためにその免疫反応を活性化することができます。


少量のウイルスにさらされることは、ワクチン接種と同じように働きます。反対に、大量のウイルスにさらされる場合、体はその感染に圧倒され、効果的に反応することができません。


森林火災を考えてみてください。 小さな火は、消火活動のための資源をアップグレードするための十分な時間があるため、簡単に抑制できます。 けれど、同時に複数の火災が発生している火災嵐においては、消火活動の資源は圧倒され、外から消火活動の資源を用意する十分な時間がありません。


ムカージーが指摘するように、病気の重症度と、この被曝量との関係には長い歴史があります。 


たとえば、小児疾患の予防接種が利用可能になる前は、遊び場で感染した子供は通常、軽度の病気を経験しました。しかし、家で感染したその子供の兄弟姉妹は、その病気のはるかに重度の症状を発症したのです。


遊び場で感染した子供は、短期間に比較的少量のウイルスを摂取した可能性が最も高いです(空気中のウイルス濃度は低い)。一方、家で感染した兄弟姉妹に感染した兄弟は、長期間にわたって高濃度のウイルスを摂取することになり、それが初期においては彼らの免疫システムを圧倒したのです。


ウイルス濃度が高くなるのは、冬の間と、よく断熱/密閉された家(空気を滅菌するためにHEPAまたはUVフィルターを通過せずに空気が再循環されます)での可能性が高くなります。 ウイルス濃度を減少あるいは除去するための新鮮な空気がない場合、病気の重症度のリスクは高くなる可能性があります。


COVID-19で病気になるリスクは、コロナウイルスにさらされ、免疫力がさらされている場合に発生します。 

これは次の方程式で表すことができます。

risk-ratio

 

この方程式は、リスクを低減するための2つの戦略を示唆しています。つまり、コロナウイルスの負荷/暴露を減らし、免疫システムを強化する、という事です。

 

 

ウイルスへの曝露量を減らすためできること
 

誰もが感染していると想定します、例え健康に見えてもです。研究によると、人々は症状が現れる前からすでに感染しているか、病気にならずに無意識のうちにウイルスを広める症状が出ない保菌者であることを示唆しています。

オランダの研究者は次のように報告しています。「発症前感染の割合は、シンガポールで48%、中国の天津で62%だった。」(Ganyani et al, 2020)したがって、COVID-19の症状(発熱、乾いた咳など)を持つ人々を隔離する介入は、おそらく意識せずにコミュニティを感染させる可能性のある、無症状の保菌者を見逃すことになります。あなたが検査を受けた場合のみ、あなたがウイルスにさらされたか、あるいはウイルスから回復したかを知ることになるのです。

ウイルスへの曝露量を減らすには、次の手順を実行します。


1. 公衆衛生ガイドラインに従う

  • ・社会的距離をとる(社会的サポートの提供を続けつつ身体的な距離を取る)
    ・少なくとも20秒間、石鹸で手を洗う
    ・微生物やウイルスが、鼻、口や目の粘膜から体内に侵入するのを防ぐために、顔に触れない
    ・ドアの呼び鈴、ドアノブ、容器など、他者が触れた可能性のあるモノの表面のクリーニング
    ・マスクと手袋を着用して、他の人へのウイルス拡散を減らす           

 

2. 吐き出された息に飛沫が含まれている可能性がある、人のスリップストリーム(後方に発生するらせん状の空気流)を避ける

社会的距離を取る目的は、他の人の呼気があなたに届かないように、あなたと他の人の間に十分な距離を置くことです。 人々の間の必要な距離は、彼らの活動と気流の方向によります。

 

あるシミュレーション研究で、KU Leuven and Eindhoven工科大学のバート・ブロッケン教授とその同僚が、ウイルス飛沫を含む可能性のある呼気のプルーム(*雲のように立ち上がる水蒸気のこと)は5フィート(約1.5m)をはるかに超えて広がる可能性があると報告しました。これは、図1に示すように、風の方向と、人が歩いているのか、ジョギングしているのかによって異なります。 (Blocken, 2020)

slipstream
 

図1.ウイルスを含む可能性のある吐き出された飛沫のプルームは、スリップストリームでその人の後ろに広がります(写真 KU Leuven en TU Eindhoven).

 

人のスリップストリームにある吐き出された飛沫のプルームは、徒歩で15フィート(約4.5m)を超え、ジョギングや自転車で60フィート(約18m)を超えることがあります。 したがって、これらの条件下での社会的距離は6フィート(約1.8m)以上必要ということになり、それはスリップストリームを避けて、人からはるかに離れた場所にいる必要があることを意味します。 

 

3. 新鮮な空気を増やしウイルス濃度を減らす 

新鮮な外気の循環を増やすことにより、無症状または病気の感染者によって広がる可能性のあるウイルス濃度を薄めることができます。そうすれば、あなたがウイルスにさらされている場合も、摂取量が少なくなり、より軽い疾患を発症する可能性が高くなります。新鮮な空気を増やすには(これは外気が汚染されていないことを前提としています)、次のことを試してみてください。

  • 窓を開けて、家や職場での換気する  インフルエンザシーズンが冬に急増する主な理由の1つは、極端な気象条件から逃れるために人々が屋内に集まるからです。人々は、熱を節約し、暖房費を削減するために窓を閉めたままにしておきます。 新鮮な空気の循環の欠如は、ウイルスの密度と病気の重症度のリスクを増加させます (Foster, 2014).
    建物の換気のために排気ファンを使用 内部の「古くなった」空気を新鮮な外気に継続的に入れ換えることにより、空気中のウイルスの濃度が低減されます。
    HEPAHigh-efficiency particulate air)空気清浄機を使用して、室内の空気をろ過  これらのデバイスは、直径が0.3 µmに等しい粒子をフィルターで除去します。ウイルスを完全に取り除くわけではありませんが、減らすことができます。
    空気の再利用をしている建物を避ける (暖房および空調システム(HAC)がHEPAフィルターを使用していない限り)
    他の人やコミュニティを守るためにマスクを着用  マスクは、COVID-19または無症状保菌者によるウイルスの放出を減らします。

 

ウイルスと戦うために免疫システムを強化する方法


免疫システムは変動するものであり、多くの要因と個人差がウイルスと戦う能力に影響を与えます。40歳の人が70歳くらいの機能の免疫システムを持っている可能性がある一方、一部の70歳は40歳くらいの機能の免疫システムを持っています。 免疫力に寄与する要因には、遺伝子、老化、以前のウイルスへの曝露、およびライフスタイルが含まれます (Lawton, 2020).
 

総合的なアプローチを通じて生活習慣を管理することで、免疫システムを強化できるかもしれません (Alschuler et al, 2020Lawton, 2020). ロートン(2020)とアルシュラーら(2020)が発表した論文を基にした次の表は、免疫システムを強化または弱める可能性があるいくつかの要因を示しています.
 

免疫システムを強化する要因
 

アクティビティ(活動) 効果
適切な睡眠 免疫力を高める
ストレスの軽減 免疫力を高める
楽観主義と希望 免疫力を高める
エクササイズ(運動) 免疫システムをサポート

野菜と果物を増やし単離フラボノイドを減らす

*フラボノイドはポリフェノールの化合物で、単離フラボノイドはフラボノイドのサプリメント

免疫システムが適切に働くことを助ける
16時間の断食(カロリー制限)毎週 免疫力を高める
低容量のビタミンD(1000~2000 IUs)

免疫システムの生得の武装を強める

好中球とマクロファージ-上部呼吸器感染症を減少

ビタミンE(200  IUs)
 

免疫システムの適応的な武装を強める

Tセルの若返りの可能性と上部呼吸器感染症の減少

亜鉛(非常に低容量) ウイルス感染に効果的(過剰摂取は免疫システムを抑制する)
ビタミンC(1日に5g)*効果がある可能性がある 入院の際には20gの点滴が肺炎からの回復に約立つ
新鮮な外気(自然の中で) 感染率を下げる


免疫システムを弱めるかもしれない要因

 

アクティビティ(活動) 効果
肺刺激物(汚染、喫煙、電子タバコ) 肺炎になるリスクを増加させる
再利用された空気 感染率の増加
無力感、フラストレーション 免疫力を弱める
過度のエクササイズ(運動) 免疫力を弱める
肥満、食べ過ぎ 免疫力を弱める
飲酒、糖と単糖の炭水化物 免疫力を弱め、糖尿のリスクを増加させる
慢性的なストレス 免疫力を弱める



これらの要因は、WHO(世界保健機関)のテドロス・アダノム事務局長のプレゼンテーション、Practical tips how to keep yourself safe(自分を安全に保つための実用的なヒント)に見事に要約されています。



参考文献

Abhanon, T. (2020 March 26). Practical tips how to keep yourself safe.

Alschuler, L., Weil, A., Horwitz, R. Stamets, P., Chiasso, A.M., Crocker, R., & Maizes, V. (2020 March 26). Integrative considerations during the CPVID-19 pandemic. Explore, 26.

Aw, D., Silva, A. B., & Palmer, D. B. (2007). Immunosenescence: emerging challenges for an ageing population. Immunology120(4), 435–446.

CDC (2020, March 26). Severe Outcomes Among Patients with Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) — United States, February 12–March 16, 2020. Morbidity and Mortality Weekly Report. CDC. March 26, 2020.

Foster, H. (2014 December 1). The reason for the season: why flu strikes in winterSITN Science in the News

Ganyani, T., Kremer, C., Chen, D., Torneri, A, Faes, C., Wallinga, J., & Hensm N. (2020).    Estimating the generation interval for COVID-19 based on symptom onset data     doi:https://doi.org/10.1101/2020.03.05.20031815

Lawton, G. (2020). You’re only as young as your immune system. New Scientist, 245(3275), 44-48.

Mukherjee, S. (2020). How does the coronavirus behave inside a patient? We’ve counted the viral spread across peoples; now we need to count it within people. The New Yorker, April 6, 2020.

Ostan, R., Monti, D., Gueresi, P., Bussolotto, M., Franceschi, C., & Baggio, G. (2016). Gender, aging and longevity in humans: An update of an intriguing/neglected scenario paving the way to a gender-specific medicine. Clinical Science, 130(19), 1711-1725.

2020年04月13日 11:19

コロナウイルスという大きな不安とストレスへの向き合い方

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変えられないものを受け入れる心の静けさを
変えるべきものを変える勇気を
そして、変えられないものと変えるべきものを区別する叡智を与えてください


世界中でコロナウイルスが猛威を振るうなか、日本でも状況は緊迫してきました。

皆さま、それぞれの立場や状況で、取れる対策、出来ることに取り組んでおられることと思います。

ストレスについての見地からは、見通しが立たないこと、未知のものは強いストレスになります。

また、コントロールできないものを、コントロールしようとすることも大きなストレスです。

なので私たちは、この変えることの出来ない大変な現実を受け入れ、

出来るだけ信頼できる情報を集めて見えないものを見えるようにして、

自分に出来ること、対処できることに集中することによって、

この大きなストレスに立ち向かって行けたらと思います。

 

不安をエネルギーに変える


不安には、大きな力があります。

それは諸刃の剣ではないかと思います。

私たちをもっとも苦しめるのは「漠然とした不安」です。

正体の分からないものや、姿の見えない幽霊ほど怖いように、

正体の分からない不安は、頭のなかで無限に膨らみ、

私たちの心を蝕んでいきます。

けれど、不安はお腹の下の方から湧き上がってくるエネルギーでもあります。

それは、私たちにアクションが必要なことを教えてくれています。

ですから、不安を押さえ込むのではなく、力に変えて使う方法を試してみてください。


まずは、不安を見えないものから、見えるものにする必要があります。

今、不安に思っていることを全て書き出していきましょう


お金や家についての不安、自分や家族や身近な人が感染するのではないかという不安、

日用品や食料の不足への不安、この先日本や世界がどうなってしまうのかという不安、等々。

様々な不安が出てくることと思いますが、出来るだけ具体的に不安の内容を書いていきます。

例えば、会社員の方であれば、「会社が倒産して失業したらどうしよう」といった不安もあるでしょうし、

自営業の方には「収入が無くなって家賃など払えなくなったらどうしよう」といった不安があるかもしれません。

また、「自分や家族、大切な人が感染して、苦しんだり死んでしまうかもしれない」という不安もあるかも知れません。

もっと身近なところでは「トイレットペーパーが買えなくなったらどうしよう」

「食料がスーパーから無くなってしまったらどうしよう」といった不安も出てくるかも知れません。

次に、それぞれ書き出したことについて、「自分が出来ること」を探していきます。


例えば、一従業員としては会社を倒産させないように何かをすることは出来ないかも知れませんが、

そうなった場合に自分が出来ることを探しておくことは出来ます。

トイレットペーパーもマスクも、代替になるものを探して準備しておくことも出来ます。

感染への不安も、こまめな手洗い、出来るだけ人との接触を避ける、会う時には2m以上の距離を取る、

換気をこまめに行う、外から家に入れるものは出来る限り消毒する、

買い物は1週間から1週間分などまとめていくなど、自分に出来る最大限の対処をしつつ、

自身の免疫を上げていくために、栄養のある食事、適切な睡眠、適度な家での運動や散歩する、

コロナについてのテレビ番組は見過ぎない、家では楽しいことを探してやる、

面白いドラマ、映画、本など読んで笑う時間をふやすといったことが出来ます。

自分に出来ることが見つかったら、不安をエネルギーに変えて、アクションを起こしていきます。


これも、今の自分に出来ることから、淡々とやりましょう。

コロナ騒動の初期には「オリンピックが延期になったら日本はどうなるんだろう」と、

不安を感じていた方もいましたが、いざそうなってしまえばそれに対処するしかない現実があります。

実は、不安というのは、ジェットコースターが落ちる直前が一番怖いのと同じで、

それが起きたらどうしようと想像している時が一番の恐怖なのです。

起きてしまったら、それに対処するのに必死で、不安や恐怖は無くなってしまうのです。

目の前の現実を受け入れ、不安を力に変えて準備するべきものは準備して、

今、自分に出来ることを淡々とやっていく。


それが、自分たちにコントロール出来ない大きな脅威にさらされた小さな私たちが、

自分を見失わないために必要なことではないかと思います。
 

 

2020年04月12日 10:55

神話の終焉と神話を生きるということ

スカイツリーと夕焼け

スターウォーズの完結

2019年12月20日に日米同時公開というかたちで、スターウォーズ エピソード9が公開され、ジョージ・ルーカスが構想した9作にわたるスカイウォーカー一族の壮大な物語が、42年の時を経て完結しました。

 

現代の神話とも言われるスターウォーズの時代背景などを振り返りながら、私たちは今、どんな時代を生きているのかを考えてみたいと思います。

 

映画には、その時代の文化や精神の在り方が表現されます。それは、その時代の主流となる文化的慣習であることもあれば、主流となる価値観や行動規範とは大きく異なる、いわゆるカウンターカルチャー、サブカルチャーであることもあります。

 

スターウォーズ旧三部作の最初の作品が作られた1970年代後半とは、どんな時代だったのでしょうか。

 

1960年代に起きたアフリカ系アメリカ人による公民権運動、ケネディ大統領の暗殺、ベトナム戦争の拡大と深刻化から、1970年代始めのオイルショックと不況、そしてベトナムからの撤退といった暗い出来事が続き、

1970年代後半のアメリカは挫折し、傷つき、疲弊していた時代と言って良いのではないかと思います。

 

またフランスで起こったヌーベルバーグの流れを受け60年代半ば以降のアメリカではニューシネマの動きが起こり、ベトナム戦争など当時の政治状況に対する失望と反発を表現した反権威主義的な映画が多く作られました。

 

ジョージ・ルーカスも始めはそうしたニューシネマの担い手として映画を作り始めますが、映画のなかで現実世界を見せることではなく、”set standards” (基準を設けること)、そして”modern use of mythology” (現代における神話)の重要性に気づき、スターウォーズを製作することになります。

 

ヨーダと東洋の叡智

この新しいstandards「基準」を設けること、つまり混乱の時代において生きるためのガイドラインのようなものを、ルーカスは東洋的な宇宙観に求めました。

 

その背景には、1960年から70年代に潜在的に発展していたニューエイジ運動があります。ニューエイジ運動とは、宇宙や自然といった個を超えた大いなるものとの繋がり、また人間の持つ無限の潜在的な能力に注目し、個人における霊性を向上させていこうとする試みでした。

 

こうした背景のもと、インド、中国といった東洋的な哲学や思想がアメリカ文化に影響を与えます。スターウォーズでもキリスト教的な人格神は描かれず、むしろ東洋的な宇宙観が見られます。

 

登場人物たちは、困難を前にして神に助けを祈ることはなく、フォース、つまり宇宙に遍在する集合的なエネルギーとのつながりによって、自分の進むべき道を見つけていきます。

 

仙人のようなヨーダの言動には、道教的な思想が色濃く見受けられます。ヨーダは、善悪ではなく、陰と陽、光と闇のバランスの重要性を説きます。

 

エピソード3の終わりに、闇の帳が降りたことを感じたヨーダは、再び光が伸びていく「時」が来るまでは、いったん身を潜めると決めたように、「時」を重要視するのも東洋的な思想の特徴です。

 

「四書五経」の一つである「中庸」の中に、次のような言葉が出てきます。

 

「君子而時中(君子はよく時中す)」

 

「時中(じちゅう)」とは、時(とき)に中(あたる)、物事における最善のタイミングにピタリと合わせることです。天の動きに逆らうのではなく、その動きに沿って動くことが出来るのが君子だと言うのです。

 

つまり、むやみやたらに行動を起こせば良いのではなく、諸葛孔明が赤壁の戦いで北西の風から東南の風へと変わる、その時に火を放つ事で勝利を得たように、「時をよく読み」、その時が来るまでは身を潜め、その時が来たら必要な行動を素早く起こすことができるのが君子です。

 

物事が動くときには、必ずその兆しがあります。普通の人が気づくことのない微かな変化の兆しを、心の目と耳で捉えることが出来る人が、君子でありジェダイなのです。

 

この変化の兆しを読み取るために古代中国で発展したものが、「易(えき)」です。易の経典である「易経」は英語では”Book of Changes”(変化の書)と呼ばれます。

 

易はいわゆる占いの一つと見なされていますが、「易経」は、「四書五経」の一つであり、君子が修めるべき哲学書でもあります。

 

この「易経」の中に、「窮すれば通ず」という言葉が出てきます。

 

「窮」は「九」であり、九は易では「老陽」にあたり、陽の極まりを意味します。窮地に陥ることはネガティブなことのようですが、窮することこそ状況を打開するための道です。

 

冬の間、死んだように見える植物たちは、冬が極まったのちに春が来て再び芽吹きます。

 

陰が極まった時に陽が生じ、陽が極まった時に、陰が生じるのです。闇が極まった時にこそ光が生じる、この闇と光、陰と陽の絶えざる循環が東洋の思想です。

 

ルーカス無きシークエル・トリロジー

半世紀前に制作されたエピソード4の背景に、ベトナム戦争や体制への幻滅と、ニューエイジ運動などの個人の意識の再生のための試みがあったのならば、現在はどうなのでしょう。

 

エピソード7から9までの製作事情に、現代の精神の在り方が垣間見られるかも知れません。

エピソード4から6までの旧三部作、エピソード1から3までの新三部作はジョージ・ルーカスのオリジナルな構想に基づいて製作されましたが、その後作品の権利と制作会社はディズニーに買収されてしまいます。

つまり、エピソード7から9までのシークエル・トリロジー(続三部作)は、もはやルーカスの構想には基づいていないのです。

 

原作者であるルーカスのいないエピソード7から9は、「スターウォーズらしさ」というイメージに振り回され、スターウォーズ旧三部作をなぞるかのような作品になってしまいました。

 

時代の最先端の技術を用い東洋の伝統的思想を取り入れるという、まったく新しいものをクリエイティブに作り出していった、未開の地に果敢に挑んでいくというルーカスの真に英雄的な精神は失われて、既にあるものをコピー&ペーストして違ったもののように見せるという保守的な態度が見られます。

 

もちろん、新しい試みもありました。分かりやすいところでは、ジェダイナイト、主人公が女性になり、世界のボーダレス化、グローバル化を反映するように、主要なキャラクターたちのエスニシティや肌の色が多様化されました。

 

けれど、この多様性の表現は、真に新しいものや世界観を表現しようとする試みというよりも、観客が見たいものを見せるというとても表面的なものに留まっているということも現代社会を象徴しているのかもしれません。

 

例えば、エピソード8で非白人女性として初めて、ローズ・ティコというメインキャラクターを演じたベトナム難民を両親にもつベトナム系アメリカ人であるケリー・マリー・トランが、映画公開後にソーシャルメディアで彼女の人種や外見に関する差別的な攻撃を受けるという出来事がありました。

その後のエピソード9では、ローズ・ティコはほんの少し映る程度のポジションに戻されてしまいます。

 

映画が一部の人たち、特にソーシャルメディアが作り出す世論に影響を受けるというのも、現代を反映しているのかも知れません。

 

ヘルメス元型と現代

エピソード9については、様々な批評がありますが、特に印象に残ったのは、シカゴ・トリビューンの次の批評です。

 

”エイブラムズ監督は宇宙レースに火をつけただけで、キャラクターの感情をどこにも着地させなかった。なぜならキャラクターは宇宙中を駆け巡りお互いを探し合うのに忙しかったからだ”

 

個人的には、これは非常に的確に現代の私たちの精神の在り方、背後にある一つの元型、ヘルメス元型を表現しているように感じました。

 

ギリシャ神話のヘルメスは、生まれてすぐに自分に必要なものを交換によって手に入れた商才のある商業の神であり、各地を飛び回る旅の神でもあります。そして、何よりも神の伝言を伝える使者であり、伝令の神、メッセンジャーです。
 

ヘルメスは手にケーリュケイオンという黄金の杖を持ち、翼のついた靴を履き、風よりも早く馳けめぐります。

計略の神でもあるヘルメスは、様々な才能を持ち、神々の伝言を伝えますが、彼自身には伝えるべき内容がありません。ただ、情報を運ぶだけです。

 

現代の神は経済だ、と言う方もいる程に、経済を中心にすべてがまわり、インターネットによってあらゆる情報が風よりも早く瞬時に世界中を飛び交い、2000年には6億8700万人だった世界の旅行者数は、2019年には14億人を突破しました。

 

IT技術の進化によって、世界の何処にいても仕事ができ友達と話すことが出来るようになり、特定の場所に縛られることなく、自由に動き回ることが出来る恩恵を手にした一方で、私たちは、何処にも本当の居場所が無くなってしまったのかも知れません。

 

日常的に大量の情報が飛び交い、そうした情報が私たちを通り過ぎていきます。私たちは、そうしたインフォメーションがただ通り過ぎていくだけのステーションのような存在になり、本当に伝えるべきものを無くしてしまっているのかも知れません。

流入する大量の情報を処理し追いかけるのに忙しくて、自分にとって本当に大事な情熱を忘れかけてしまっているのかも知れません。

 

ギリシャ神話では、ヘルメスという常に動き回る旅や伝令の神だけでなく、常に家の中心に居て、そこから動くことのないヘスティアという炉、竈(かまど)の女神が大変重要視されていました。

 

ヘスティアは、家庭の守護神であり、国家統合の守護神でもありました。ヘルメスには、ヘスティア、つまり不動の内なる炎を護る神も一緒でなければなりません。
 

”Follow your bliss”「あなたの至福に従え」

ルーカスはジョゼフ・キャンベルの英雄神話の研究に基づき、サーガを構想しました。けれど、もちろんキャンベルは、ディズニーに儲けさせるために神話の研究をしたわけではありませんし、ルーカスもまた大儲けするためにスターウォーズを製作したのではありません。

 

キャンベルもルーカスも、従うべきは”your bliss”「あなたの至福」だと私たちに語りかけていました。

 

”Follow your bliss  and the universe will open doors where there were only walls.”
「あなたの至福に従いなさい。そうすれば、宇宙は壁しかなかった所に扉を開けてくれるでしょう。」

 

それがキャンベルの伝えたかったことであり、ルーカスのしたことでした。


キャンベルは言います。
 

「人々は、物事を動かしたり、制度を変えたり、指導者を選んだり、そういうことで世界を救えると考えている。

 

違うんです!生きた世界ならば、どんな世界でもまっとうな世界です。

 

必要なのは世界に生命をもたらすこと、そのためのただ一つの道は、自分自身にとっての生命のありかを見つけ、自分がいきいきと生きることです。」

英雄とは、生命力が枯渇してしまった荒れ地に、再び命をもたらすことのできる存在のことです。

スターウォーズが完結した今、ルーカスやキャンベルが私たちに残してくれたメッセージをもう一度思い出し、

他人の生き方のコピー&ペーストでもなく、

他人が求める生き方でもなく、

自分の世界に、自分にとっての生命のありかを見つけ、

自分がいきいきと生きること。

それこそが、英雄的生き方であり、神話を生きることではないかと思います。

2020年02月01日 13:30

シャルトルブルーとゲーテ

闇と光と赤
前回のブログでは、シャルトルのノートルダム大聖堂と、ラビリンスのお話しをしました。
 
シャルトルのノートルダムといえば、もう一つ有名なのが、パリのノートルダムと同様に、バラ窓があります。
 
バラ窓(Rose window)とは、ゴシック建築によくみられる、放射状に伸びた仕切りとなる骨組みによってバラの花の形、もしくは車輪のようなパターンをなす円形の窓のことで、ステンドグラスで作られています。
 
(なので、車輪窓wheel windowと呼ばれることもあります。)
 
特に、シャルトルのバラ窓の青は、現代でも科学的にその成分の解析には成功していないと言われていますが、
 
その神秘的で、比類なく美しく深みのあるブルーは、「シャルトルブルー」と固有名詞で呼ばれるほどです。
 
どんなに色の解析をしても、「シャルトルブルー」の本当の深さと美しさを科学的に解明することはできない、とゲーテなら言うのではないでしょうか。
 
ニュートン的な科学、光学で光の波長に分解したとしても、大聖堂のなかで体験する神秘の青の本質は分からないのではないかと思います。
 

光だけを見つめたニュートン

アイザック・ニュートンは、自分が生まれる前に父が亡くなり、3歳の時には実母は再婚相手のところに行ってしまい、とても孤独な幼少期を過ごしています。

家にひきこもることが多かったと言われています。
 
そして、そんな孤独な彼がひたすらに惹かれ見つめていたのは、窓から差し込む太陽の光でした。
 
彼は取り憑かれたかのように、沢山の日時計を作りました。
 
そして、その彼の飽くなき光への希求が、光のプリズム実験へと繋がっていきます。
 
ニュートンは、ただ光だけを見つめ、それを分解し、色を発見しました。彼にとって闇とは、単なる光の欠如でした。

そこが、ゲーテとの大きな違いです。
 

闇を受け入れたゲーテの色彩論

ゲーテの色彩論では、闇は色彩現象をになう重要なものでした。

ゲーテは、闇無しには、色彩は存在しないと考えたのです。彼は、光だけではなく、もっと大きな全体を見ようとしたのです。
 
それが、対象だけを細かく分解していく科学的なアプローチと、芸術との違いでもあるのかもしれません。
 
ゲーテは彼が20年の歳月をかけて執筆した色彩論のなかで、「色彩とは、光の行為であり、受苦である」と書いています。
 
真っすぐな光が何かにぶつかり、屈折し、「苦しむ」ことで色となります。
 
そして、「行為」ということは、そこには動きがあります。それは、止まったもの、静なるものではなく、生成するものです。
 
色は、光と「人間の眼」との出会いによって生じるものなのです。
 
シャルトルブルーの本質が科学的には解明できないのは、それが私たちの「眼」との出会いによって生じる現象だからです。
 
ゲーテの色彩論では、青は闇に一番近い色です。
 
その青がステンドグラスに差し込む光と出会うことによって、「赤」というパワフルな色を生み出します。
 
ゲーテは、この光と闇、対立するものが呼びもとめ合う「分極性の働き」を自然のなかに見いだし、そして、その互いに対立するものが呼び求め合い、統合することで、より高いものが生じる「高昇の働き」も発見します。
 
シャルトルのバラ窓には、青と赤が使われていて、赤は「慈愛」のシンボルだと言われています。
 
慈愛は、英語だとAffectionでラテン語のaffectioを語源に持ちますが、ラテン語のaffectioのいくつかの意味の中には「善い意志」「意志」という意味もあります。
 
これは、自身も沢山の苦難と喜び、闇と光を体験したサイコシンセシスの創始者、ロベルト・アサジオリが、
 
私たちの存在の中心に「意志」を置いたことにも通じるのではないかと思います。
 
2019年05月08日 13:43

シャルトルのラビリンス

大聖堂の天井画

The Labyrinth of Cathédrale Notre-Dame de Chartres
 

パリのノートルダムが初期ゴシック建築の傑作なら、クラシカル・ゴシックの最高傑作はフランス中部にある都市シャルトルのノートルダム大聖堂です。
 
11世紀初めにロマネスク様式で建てられたシャルトルのノートルダム大聖堂は、12世紀末に一度火災によって焼け落ち、ゴシック様式で再建されたのです。
 
中世では、巡礼者のために床にラビリンス(迷宮)が描かれる大聖堂が現れましたが、このシャルトルの大聖堂の床にも、ラビリンスがあります。
 
ラビリンスは迷路と間違えられやすいのですが、実は全く別の構造です。
 
ラビリンスと聞いて、クレタ島クノッソス神殿のラビリンスを思い出す方もいらっしゃるかも知れませんが、
 
まさにこのクレタ島のラビリンスの紋章であるLabrys(両刃の斧)がLabyrinth(ラビリンス)の語源であったという説もあります。
 
クレタ島にあるラビリンスは、いわゆる迷路のような通路が入り組んでいるような建造物ではなく、分岐のない一本道がグルグルと続いているのですが、
 
これこそが、ラビンリスの特徴です。
 
ラビリンスでの通路は決して交差せず、道に選択肢はありません。
 
そして、グルグルと一本道を辿っていくと、何度も中心の近くを通りすぎることになります。
 
つまり、幾度もついに中心に辿り着いたかと思いきや、まだまだ道のりは続いていくのです。
 
すると一本道なのに、自分がまるでどこかで道を間違えたかのような不安を感じはじめ、何度も何度も中心に辿りついたかと思ったらやっぱり違ったとがっかりすることになります。
 
けれどその道は実際に中心へと通じていて、必ず中心に辿りつけるのです。

中心に辿り着く以外の選択肢はないのです。
 
そしてその一本道を辿っていくことで、その空間内のすべてを通る、すべてを体験するような設計になっているのです。
 

アリアドネの糸

 
何か複雑な物事を解決する際に、「糸口を探す」「手がかりを探す」と言いますが、
 
英語では「糸口」「手がかり」は、clueです。
 
もともとclueは糸玉、つまり糸をグルグルと巻いてまるめたボールを意味していました。
 
そして、この糸玉は、アリアドネの糸玉のことです。

アリアドネとはミノス王の娘です。
 
クレタ島のミノス王は、自分の后パシパエが美しい白い雄牛と交わり産んだ、牛の頭を持つミノタウロスを、
 
名工ダイダロスに建造させたラビリンスの奥深くに閉じ込めます。
 
そして、成長し凶暴になったミノタウロスの食料のために、9年毎に7人の少年と少女を生け贄として捧げていましたが、
 
あるときアテナイの英雄テーセウスがこの生け贄に自ら志願し、クレタ島にやってきます。
 
テーセウスに恋したミノス王の娘アリアドネは、彼にラビリンスから脱出するための糸玉を渡します。
 
こうしてテーセウスは、ラビリンスでミノタウロスを倒し、アリアドネの糸を辿って無事にラビリンスから脱出することに成功するのです。
 

シャルトルのラビリンス

 
シャルトルのノートルダムのラビリンスは、11の同心円からなり、その中心には6枚の花弁を持つバラが描かれています。
 
バラは、大いなる自己、セルフの象徴です。
 
つまり、ラビリンスは、真の自己への回帰を表現しているのです。
 
中世ヨーロッパでは、個人としての巡礼者が、世界・宇宙の創造主であり中心である神との合一を目指す、瞑想の一つの方法としてこのラビリンスを用いていました。
 
ラビリンスは人生の道のりにも似ているし、何かの物事を行ううえでのプロセスにも似ているのではないでしょうか。
 
必ず中心に辿り着くことを信じたいけれど、
 
幾度も間違えたのではないかという不安にふるえ、
 
もう辿り着けないかも知れないと恐怖に戦きながら、
 
それでも微かなアリアドネの糸を辿って進んでいく。
 
カウンセリングも、そんなプロセスにどこか似ています。

セッションのなかに立ち現れてくるアリアドネの糸を一緒に辿りながら進んでいきます。

クライエントの脳裏には、何度も、何のためにこんなことをしているのだろうと疑問がよぎります。

もう中心に辿り着いたかと思うと、それはまだ途中でしかないことが分かり、がっかりしてしまいます。
 
カウンセリングでは、途中で休憩してもいいし、どこまで進みたいかは自分で決めてよいことだと思います。
 
必ず中心に辿り着かなければならないこともないでしょうし、
 
自分で進む意図も無いのに進んでいる方もいるでしょう。
 
それでも、人生のラビリンスでは、今日も、呼吸をし続けることを選んでいるのであれば、
 
あなたはラビリンスを進んでいるのだと私は思います。
 
そして自分で意図しなくても呼吸をし続けられているのであれば、
 
それは大いなる自己が、あなたがラビリンスを進むのを後押ししているのではないかと思います。
 
 
2019年05月03日 18:02

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